建築物や土木、あるいは一般家庭の外構でも使用されるコンクリート。耐久性の高さが特徴ですがひび割れや剥がれ、引っ張りに対する弱さといった課題もあります。
そのような課題を解決する素材として開発されたのが「ファイバーコンクリート」です。
ここではファイバーコンクリートの特徴と問題点、そして外構で使用する場合の施工方法などを解説します。
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////「ファイバーコンクリート」とは
「ファイバー」とは繊維のことで、ファイバーコンクリートはその繊維を練り交ぜた「繊維補強コンクリート」のことです。
使用する繊維には金属やガラス、有機繊維などがあります。
ファイバーコンクリートは耐久性を向上させたもの
ファイバーコンクリートはモルタルやコンクリートに繊維を練り交ぜて、強度を高めたものです。
建築物に使用されるコンクリートは耐久性が高いものの、次のような欠点もあります。
- 圧縮には強いが引っ張りには弱い
- 重量が大きい
- 温度変化によりひび割れが発生する
コンクリートは1センチ角あたり240キログラムの圧縮力に耐えることができますが、引張力に対してはわずか24キログラムの耐性しかありません。
また重量は1立方メートルあたり2.4トンと重く、タワーマンションにそのまま使用すると地震の揺れに耐えられなくなります。
そのため、タワーマンションの外壁には軽量気泡コンクリートというものが使用されています。
このような欠点を補うために開発されたのが、ファイバーコンクリートです。
コンクリートへの繊維の配合割合
コンクリートの欠点を補う繊維ですが、練り混ぜる量のコンクリートに対する割合は0.5~3.0パーセントとなっています。
繊維の割合が多くなるほど強度は増しますが、その反面施工に時間がかかるようになります。
さらに繊維素材によっては高価なものがあるため、配合率を高めるとコストが相当に高くなる点にも注意が必要です。
ファイバーコンクリートは繊維を数ミリから数十ミリに切断してコンクリートに練り混ぜています。それぞれの繊維は特徴が異なり、その特徴に応じた用途で使用されます。
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////ファイバーコンクリートの種類
ファイバーコンクリートは次のような繊維のタイプにより、いくつかの種類があります。
- 鋼繊維
- ガラス繊維
- 炭素繊維
- 有機系繊維
特に需要が多いのは軽量であり施工しやすい「有機系繊維」のファイバーコンクリートです。
鋼繊維コンクリートの特徴
鋼繊維は安価であることと、コンクリート内のアルカリ環境でも腐食しないことが利点のファイバーコンクリートです。
また金属はコンクリートとの付着率が高く、曲げ強度が高いという特徴もあります。
ただし引っ張りに対する強度はほかのファイバーコンクリートと比べると1番低いことが難点です。
ガラス繊維コンクリートの特徴
ガラスは本来アルカリによって侵食される素材であるため、ガラス繊維をコーティングする技術が必要となります。
あるいは酸化ジルコニュームを含むガラス繊維の開発により、アルカリ成分であるコンクリートに練り込むことに成功しています。
ガラス繊維は表面に割れ目がないことから強度が高く、引っ張りに対しても強いという利点があります。
ただしほかの繊維素材と比べると単位重量あたりの表面積が大きいことから、その表面の水分に侵食されやすいという課題があります。
炭素繊維コンクリートの特徴
炭素繊維によるファイバーコンクリートは、ほかの繊維素材と比べると極めて高い強度を持つのが特徴です。
耐候性や耐水性に優れ、重量も軽いという利点がある反面、価格が高価であるのが課題となります。
有機系繊維コンクリートの特徴
ナイロンやポリプロピレンといった有機物を練り込んだコンクリートです。
これらの繊維は綿やレーヨンなどの有機物と異なり、コンクリート内のアルカリ環境によって劣化しないのが特徴です。
安価であることと衝撃抵抗に優れていることが利点ですが、引っ張りに対する抵抗力が低いこととセメントとの付着率が鋼繊維の10分の1程度と低いことが課題となります。
////ファイバーコンクリートの用途
ファイバーコンクリートの用途には次のようなものがあります。
- トンネルなどの剥落防止
- 道路舗装
- 外壁材
- 高層建築物の外壁(カーテンウォール)
- 柱、梁、耐震壁
- 表面保護コンクリート
おもに土木で使用されますが、外構素材として使用する場合には駐車場の土間コンクリートなどで使うことになるでしょう。
駐車場の土間コンクリートとして施工する方法
駐車場の土間コンクリートを施工する際に、ひび割れ対策としてメッシュ配筋が施工されるケースがあります。
しかしこのメッシュ配筋は手間がかかるうえに、コンクリートを流し込む際にも注意が必要となるなど課題があります。
そこでファイバーコンクリートを使用すれば、施工時の手間が大幅に削減されるというメリットが生まれます。引っ張りにも強く温度変化によるひび割れも発生しにくくなります。
外構でファイバーコンクリートを使用する場合には、まず生コンを打設してから仕上げ前にこまかく切断した繊維(プロピレン繊維)を散布します。
その後、タンピング(表面を叩く作業)をすることで散布した繊維が沈み込みます。
これだけの作業でメッシュ配筋と同等のひび割れ対策効果が期待できるようになります。駐車場のほかに玄関アプローチなどにも使用できるでしょう。
ファイバーコンクリートの問題点
ファイバーコンクリートを使用する際に、次のような問題点があります。
繊維がコンクリートの表面から露出する
外構でファイバーコンクリートを作る際には、施工時に繊維を混ぜる形になります。しかし一般的にファイバーコンクリートはあらかじめコンクリートに繊維を混ぜ込み使用します。
そのため、仕上げ後に繊維がコンクリートの表面から露出することがあります。
有機系繊維であれば特に問題ありませんが、金属を使用する場合には車が通るとタイヤをパンクさせることにつながります。
そこで施工時にはタンピングをしっかりと行い、表面に浮き出てこないようにする必要があります。
また仕上げた後に表面から浮き出た繊維は、パーナーやカッターなどで切断したり除去したりすることも必要です。
解体後はリサイクルできない
コンクリートは解体後、混合物を除去して路盤材やコンクリートの骨材などにリサイクルされます。
しかし繊維コンクリートは繊維の分離が難しいため、産業廃棄物として取り扱われリサイクルができません。
実は産業廃棄物として発生するコンクリートは年間で3000万トンほどあり、これは廃プラスチックの年間発生量であるおよそ900万トンをはるかに超える量となっています。
SDGsへの取り組みが注目される中で、このコンクリートの破棄に対しては問題視されています。
そこで解体したファイバーコンクリートを加熱し、融解分離しやすい「融点が低い金属」を使ったファイバーコンクリートの開発が進んでいます。
ただしこれは一般の外構で使われることはないと考えられるため、住宅でファイバーコンクリートを使用する際には環境負荷という課題があることを把握しておく必要があります。
まとめ
ファイバーコンクリートは通常のコンクリートの欠点を補う利点があり、駐車場などの外構でも使用できます。
ただし施工時の注意点やリサイクルが難しいといった課題もあります。自宅の外構で使用する際には、それらの問題点を考慮したうえで活用するとよいでしょう。
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